小説-通勤は車|著=国会と議員を探せ

 それまでの通勤は車だった。それが父の命令で、いやこの場合は父のお願いだろうか、JRに乗ることに決めたのだった。『乗って残そう可部線を』その運動の一環だった。父はその運動の世話人になっていたからだ。

 ところで、私が列車に乗るのも、今日で最後になる。別に廃線が早まった訳では無く、私が退職をする訳でもない。今日から、ひとり暮らしを始めるからだ。

「ああ、今年はどうかのぉ」突然おじさんが話しだす、たぶん野球の話しだろう。「さー、毎年この時期は、優勝、優勝と騒いでいますけどね」

 最近ペナントレースの事を、かなり気に掛けている。おじさんが持つ新聞に目をやると、何時も見ているスポーツ欄だった。そのスポーツ欄を読もうとした時、携帯が一回鳴った。彼女からのメールだ。

 そのメールで気が付いた。今朝、おじさんが持つ新聞が、妙に私の目を引いて、それを気にする自分。その理由が分かったのだ。

 彼女からのメールは、ホームにいる時間に届く事が多い。その返事もホームでおこなう。以前彼女が、私がホームに立っている時間を聞いてきて、そのあとこう言ったからだ。 『列車内、携帯、禁止だよ』

 今朝、そのメールが届いていなかったから、駅のホームでやる事が無く、その代わりに、おじさんが持っていた新聞が気になったのだ。

「おはよう。今日の新聞の十四面の真ん中辺りを見てね」

 何があるのだろう。そう思っておじさんに頼んで新聞を借り、十四面を開いた。するとそこには、彼女の投稿記事が載っていた。彼女の喜んでいる顔が頭に浮かぶ。それだけで自分もうれしく感じる事ができた。読み終える

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